
この往復書簡は、受講生の美奈子(仮名)さんがクローズクラスを終えて、
次の養成講座に来られる間に下さったお手紙と、
それに対する講師からの返答です。
講座では度々受講生に注意するのですが、
いわゆる精神世界の講座でどれほど高邁な話を聞こうとも、
はたまたそのワークで気づきを得ようとも、
日常に戻ってその気づきを実践できなければ、
得た気付きは雲散霧消してしまうものだと。
つまり得たと思った気付きも、
実行に移せなければ身につきません。
講座を開いている側からすれば、
受講するだけでも変容は起きると言いたいところですが、
それは真っ赤な嘘になります。
1年間夢から言われている忠告は同じなのに、
それを実行に移すことなく終える人も、
残念ながらいます。
そうなると精神世界を渡り歩くことになってしまいます。
そういう人を精神世界のサーファーと洩れ聞きましたが、
もったいないことです。
この美奈子さんは家族の一大事があって、
それが彼女に気づきをもたらしました。
その経緯を知らせてくれましたので、
みなさんにお目にかけます。
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{受講生の美奈子(仮名)さんから講師宛のメール}
クローズクラスも終わり日々の生活が戻ってきました。
今朝の夢は全く意味が分からず、メッセージ性も感じられないものでした。
それは、「山登りは、平坦に見えるところが坂で、坂に見えるところが平坦だ」というものでした。
そのあと、どういう意味があるのか(夢に)問いかけてみました。
ウトウトしていて見た夢は、
「ルーブル美術館のような強化ガラスの屋根を玉になった私が、
凄い勢いで突き破って入っていく。(気持ちがよかった)」というものでした。
キーワードを調べても分からず、全てが夢の変な所です。
他にやることがあるのですが、
夢を読み解く作業から離れられないでいましたので、
日々の振り返りをしてみることにしました。
昨日は高齢の義母の介護申請のために夫と一緒に病院に出掛けました。
杖をついてやっと歩ける母を病院まで連れて行く途中、
息子(夫)が体を支えたり手をつないだりしている姿を側で見ながら、
口では悪態をついているけど、
本心は母親を大切にしたいという気持ちが溢れているのをみていました。
そんな日々の事を思い出しながら、坂内先生の本を読み返していました。
その中で、「夢はトラウマの存在を教えその取り組みを教えてくれる」という一行に目が留まりました。
「夫の表に見える態度と心の中の2面性」それは、
正しく私の中にある二面性だと直感しました。
コルセットというトラウマの中で、縛られているのは苦しい、
でもそれを外すことで自由になる怖さにおびえ、
慣れ親しんだ世界に居た方が楽だとコルセットを身に着けるものの、
やっぱり縛りが苦しくて自由を求めて逃げ出したくなる私。
私も、表の顔と裏の顔で暮らしている。
そういう事だったのか!(講座で指摘を受けても腹落ちしていなかった)
精神世界(講師注:心の内)は現実世界(講師注:実生活)に反映されているのもよく理解できました。
婿養子に行きたいという子供(講師注:やっと結婚したいと言ってきた一人息子が何代も続いた旧家の跡取り息子を返上し妻になる人の姓を名乗りたいとのこと)に、
家という縛りを押し付けながら、
自由に生きて欲しいと願う自分の二面性に、
息子は「母の本当の気持ちが見えない」と言っていましたが、
私のトラウマが彼を苦しめていたのか、
というのが十分過ぎるほど理解できました。
夢は現実世界で歩まなければ意味がありません。
自分のトラウマ克服に向けて、今日が一歩の記念日となりました。
夢を学んで本当に良かったと思います。
今日の夢の解釈がこれで良いのかは分かりません。
先生からのアドバイスが頂ければ嬉しです。
美奈子
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{講師から受講生の美奈子さんに宛てたメール}
最初の夢、「山登りは、平坦に見えるところが坂で、坂に見えるところが平坦だ」
その後の白日夢では、「ルーブル美術館のような強化ガラスの屋根を玉になった私が、
凄い勢いで突き破って入っていく。(気持ちがよかった)」と言うのですね。
このメッセージの関連性と、
気付かれたエピソードとの関連性を見ていくことにいたしましょう。
辞書で「山」を引かれましたか。
「山登り」は自己探求を象徴します。
この夢の場所は山の中。山登りの最中です。
美奈子さんは自己探求の真っ只中にいます。
実際、山登りをすると、平坦なところに出た時ホッとします。
それまで集中して登っていますから、気は張り詰めているのでいつも油断ができません。
それが平坦なところに出て、足を上げ続けなくて良いところに来たので、
集中も溶け、気が緩みます。
つまりホッとして休憩に入った気分になります。
しかしこれはまだまだ続く山登り(=自己探求)に向けて、
いっとき体力気力温存の時です。
なのでこの気の緩みは過ごし方によってこの先に影響が出ます。
この休憩の取り方で山登りを続けられるかどうかがある意味決まります。
「山登りは、平坦に見えるところが坂で、坂に見えるところが平坦だ」の意味は、
自己探求に一心不乱の時(=坂)はそれに集中するので安全だし、
安心だけれども、平坦なところに来ると休みたくなって気も緩む。
この時をどう過ごすかが大切だと言われているように思います。
「クローズクラスも終わり日々の生活が戻ってきました。」
の書き出しで今回連絡をくださったのですから、
これから養成講座においでになるそれまでの時間の今をどう過ごすか、
まさにそれを指しているのでしょう。
そこで見えてきたのが、
「昨日は高齢の義母の介護申請のために夫と一緒に病院に出掛けました。
杖をついてやっと歩ける母を病院まで連れて行く途中、
息子(夫)が体を支えたり手をつないだりしている姿を側で見ながら、
口では悪態をついているけど、
本心は母親を大切にしたいという気持ちが溢れているのをみていました。 ー中略ー
「夫の表に見える態度と心の中の2面性」
それは、正しく私の中にある二面性だと直感しました。
コルセットというトラウマの中で、縛られているのは苦しい、
でもそれを外すことで自由になる怖さにおびえ、
慣れ親しんだ世界に居た方が楽だとコルセットを身に着けるものの、
やっぱり縛りが苦しくて自由を求めて逃げ出したくなる私。
私も、表の顔と裏の顔で暮らしている。
そういう事だったのか!(講座で指摘を受けても腹落ちしていなかった)
精神世界は現実世界に反映されているのもよく理解できました。」
ここで繰り返しになりますが、
この「精神世界(心の内)」と「現実世界(実生活)」が、
夢の「坂」と「平坦」の対比と思われます。
実は精神世界(講師注:講座のこと)で学んだことを、
家に帰って実際に当てはめられなければ何にもなりません。
つまり山登り(自己探求)をしているのではなく、
山登りのガイドブックを読んだだけです。
つまり「平坦」に当たります。
反対に実際に当てはめて行動にうつした場合、
初めて坂道、つまり山登り(自己探求)のはじまりになります。
夫と自分の二面性に気づかれたこと、
気づくことが学びに必須なのだとこの夢は教えてくれています。
次の、「ルーブル美術館のような強化ガラスの屋根を玉になった私が、
凄い勢いで突き破って入っていく。(気持ちがよかった)」というところは、
精神世界(講師注:精神世界業界?)で言う「ブレークスルー」(=難関突破)ではないかと思います。
「気持ちがよかった」とのことなので。
「ルーブル美術館のような」は、
「ような」を省いて、「ルーブル美術館(=封建制社会)」と受け取ってみてはいかがでしょう。
ルーブル宮殿と、
(強化ガラス製)ルーブルピラミッド(=魂の自由を目指す社会)の収まる
クール・カレ(方形中庭)からの眺めはこの夢の背景としてぴったりに思います。
「ルーブル城」はかつてコルセット姿が闊歩したところです。
そこでのカルマが今生のトラウマとなり、
「強化ガラスの屋根(=現代の粋を集めた思考形態=物質主義的価値観)を玉になった私が、
凄い勢いで突き破って入っていく」ことで、
原因(封建制社会)と結果(物質主義的価値観)が、
夢の「ルーブル美術館」に見られるということのようです。
クラスで話し合われた過去生はイギリスでしたが、
おそらくフランスルーブル城での過去生もおありで、
課題は同様なのだと思われます。
そうなると美奈子さんが抱える自由への希求と、
厳格なものへのある種の安心感の間で、
揺れ動く心理状態が今生の大きなテーマであったことが理解できると思います。
「玉になった私」という表現は一生ものになるでしょう。
「玉になった私」だからできるということですから。
わたしたちは魂が肉体に入った存在です。
「たましい」は「玉」に「しい」という接尾語をつけた言葉で、
玉と同じ完全なさま、様子、感じを表します。
ということはもともとの完全な玉としての自分を取り戻し、
そのたましいの視点で理解すれば、
現状をブレークスルーすることが可能だということになります。
これは人生で時に起きる大切なイニシエーションを表し、
これ自体が両性具有の状態を得ることができたことを表しているのだと思います。
言葉を代えると、両性具有的展望に立てたことで、
人生の意義づけを換えられたのでしょう。
母親に接する夫の姿を通して、
クラスで取り上げたコルセットの夢と、
ご自分のこれまでの状態とを心の中に並べることができて、
たましい(=魂≒陰陽の合体≒両性具有性)としての自分を取り戻し、
そこで大きな気づきを得ることができたということと受け取りました。
クローズクラスの中で学んだことを、
実生活に持ち帰って結婚相手を見たら、
そこに自分と同じ問題を抱えている夫の姿を確認できたのでしょう。
この気付きは大きなものです。
誰もがこれを認められず悩み苦しみます。
ここまで来るとある種、夢が承認してくれた成長の証なのだと思います。
夢がバックアップしてくれたのでしょう。
「玉になった私」という表現は、
これこそが真実と言えるでしょう。
更に気付きは、
自分を振り返ることができたからこそ、
息子との間の問題にも踏み込めたようです。
「婿養子に行きたいという子供に、
家という縛りを押し付けながら、
自由に生きて欲しいと願う自分の二面性に、
息子は『母の本当の気持ちが見えない』と言っていましたが、
私のトラウマが彼を苦しめていたのか、
というのが十分過ぎるほど理解できました。」とのこと。
潔く自分の矛盾を認められた美奈子さんをこれから息子さんは誇りに思うことでしょう。
夫の姿と息子の生き方が美奈子さんの心を丸くしてくれました。
「夢は現実世界で歩まなければ意味がありません、
自分のトラウマ克服に向けて、
今日が一歩の記念日となりました。
夢を学んで本当に良かったと思います。」
まさにこのことを二つの夢が教えてくれたのですね。
「今日の夢の解釈がこれで良いのかは分かりません。
先生からのアドバイスが頂ければ嬉しです。」とのことなので、
講師として思うところと、
夢からメッセージを読み取る実際的方法をお知らせするためにこの文章をしたためました。
現実と夢の象徴を重ね合わせる、その道筋を示したつもりです。
2018年3月吉日
天の鳥船庵 夢療法家
坂内慶子
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美奈子さんは「玉」になれたことで、
現状の難関である強化ガラスをものともせず、
心のこれまでの次元を突破できました。
だからこそ現代の価値観の中で玉を体験した彼女は、
これから活躍できる場を手に入れるでしょう。
心の成長は自分で確認していく作業が必要です。
自分を認めるために。
自分を愛おしむ(いとおしむ)ために。